モルモンと金板

モルモンと金板

モルモン教には聖書の他にも聖典があって、そのうちの一つはモルモン書と呼ばれます。モルモン書は紀元前600年から紀元400年頃まで古代アメリカに住んでいた民の記録です。この記録はジョセフ・スミスが天使に導かれて発見しました。それは金の合金でできた版に記されていました。この金の版は、モルモン書に出て来る大切な記録である真鍮版と混同されますが、両者は同じものではありません。ジョセフ・スミスが受け取ったのは金版で公式な記録であり、歴史の抄録が書かれてあり、それから翻訳されたのがモルモン書です。真鍮版はそれとは異なり、それについてはモルモン書の中に出て来る預言者の1人であるニーファイからその版について知らされています。

その真鍮版には、モルモン書の最初の方に記されているように、エルサレムを去ってアメリカ大陸に航行してきた家族の系図が載っています。エルサレムの差し迫った破壊を逃れて、この家族の長であり神の預言者であったリーハイは、息子たちにエルサレムに戻って、真鍮版を手に入れて来るように頼みました。何度か試したあとで、モルモン書の中で最も著名な息子であるニーファイはその版を見つけ、その旅の間、家族のもとで保持しました。

この版にはリーハイの家族の歴史が載っていたのでとても重要でした。ニーファイがエルサレムから真鍮版を持って帰ったとき、リーハイはそれを読み返し、かなりの時間それを研究したようです。

「父が見ると、その中には、世界の創造とわたしたちの最初の先祖であるアダムとエバの話しを載せた、モーセの五書があった。また、世の初めからユダの王ゼデキヤの統治の初めに至るユダヤ人の記録もあり、また、世の初めからゼデキヤの統治の初めに至る聖なる預言者たちの預言や、そのほか、エレミヤの口を通して語られた多くの預言も載せてあった。」(1ニーファイ5:11−13)

リーハイとその家族は真鍮版を聖典と見なしていました。旅を続ける前に命をかけても手に入れるほど価値があるものだと理解しました。その版は預言者から預言者へと何世紀にもわたって引き継がれました。系図の他にもたくさんの古代の預言や、説教が書かれています。そのうちの一部は聖書にも載っています(例えば、イザヤの預言)。私たちが真鍮版の内容についても知っているのは、モルモン書に、ニーファイが数回にわたって真鍮版から直接引用しているからです。モルモン書の基になった公式の歴史は、金版に刻まれました。それをジョセフ・スミスが後になって翻訳したのです。ジョセフは一度も真鍮版を手にすることはありませんでした。 [1]

真鍮版が重要なのは、それがモルモン書の預言者にとって聖典であったからです。私たちが真鍮版に書かれていた内容だろうとして知っている事柄は、聖書に載っている内容と直接的に呼応しています。この関係はモルモン書の物語の真実性を支持しています。何故ならば、モルモン書の預言者が聖書に記録された文明と同じ聖句や預言者を知っていたからです。モルモン教の鍵になる聖典の一つであるモルモン書にとって、この真鍮版が大きな役割を果たしたことは確実です。現代の預言者は一度も真鍮版を入手したことはありません。

 

参考資料

  1. 「モルモン書の版と記録」、グラント・R・ハーディーおよびロバート・E・パーソンズ、世界全体へ